愛知県常滑市の「棒手振り」
(1)「棒手振り」とは
 愛知県常滑市の常滑漁港では、現在では全国的に少なくなった「棒手振り」(写真、魚の行商の職、街では“ぼてさん”と呼んでいる)等の職業が残っており、当地の名産であるメジロ(アナゴ)、エビ、近海物などを各家庭や料理屋に売り歩いている女性達がいる。現在も総勢20人程で中には80歳以上になっても現役で働く棒手も8名程いる。もともと棒手振りの仕事は漁師が捕った地魚の黒鯛、大海老、かに、イカ、かれいなどの魚介類を問屋に出荷し、その残りを漁師の妻が地元で売りさばく仕事であった。現在は漁協にて自らが競り落とし、その魚介類を食べられる状態まで下処理し、籐製籠付きの乳母車に載せ街を歩いて商いをする。それぞれ固定客もあり1日30から40軒もまわり、その行動範囲は広く10kmほども歩くという。「棒手振り」による魚の販売は、スーパーマーケットなどで魚の下ごしらえをしてパックで販売するスタイルが街に定着するまではもちろん、近年まで魚介類の販売に関しては主役であった。祭りに使うメジロなど大量にさばき客に配達したり、注文があれば刺身の仕出しまで請け負っていた。
(2)常滑の棒手振りの特徴
 常滑の棒手振りの特徴は、籐製の乳母車に氷を詰めた木箱を積み込み、その中に自分の買い付けた魚を入れて売り歩く。棒手振りの中でも役割分担があり、メジロの下処理や、買い付けた魚など交換し合いながら品物をそろえていく。84歳現役の棒手さんに話を聞いたが、現在はスーパーや八百屋でも下処理した魚を売っているので買ってくれる所が少なくなったという。家族は高齢のため辞めたらどうかと勧めるが、いい小遣い稼ぎになることと、お客さんが待っていてくれるから続けているという。 配達の皿も、現在のような発砲系容器が出回るまでは、各家庭には陶器製の皿で魚を配っていた。その皿を探してもらうよう掛け合ったが、知らず知らずのうちに処分してしまい、現在は全く残っていない。また祝いの席には刺身をつくり、大皿に盛りつけて配った盛んな時もあったので「棒手振り」の家には仕出し用の見事な大皿があったという。 知多の海は昔と比べて、魚の種類は変わらないが漁獲量が激減したという。現在中部国際空港の建設が進んでいるが、近年漁場の減少や漁師の出船が少なくなったとも言われ、最近では、祭りに欠かせないメジロが不足している。
     

アナゴをさばくぼてさん1

ぼて振りの引き車

アナゴをさばくぼてさん2

漁港、競りの様子

アナゴをさばくぼてさん3

アナゴをさばくぼてさん4
 
 
 
 ↑写真をクリックすると拡大されます。

■あなたの住む町で、このような行商さんがいれば、是非ご一報ください。

行商TOPに戻る         HOMEに戻る

食と器のデザイン研究